形成外科の役割とは、身体の見た目(形態)と機能を医学的に整え、改善・再建することです。単なる美容目的の整形とは異なり、病気や事故、先天的な異常などで損なわれた組織や器官に対して、できる限り自然な状態に戻すことを目的としています。そのため、形成外科は医療としての機能的な治療と、見た目の回復という審美的な観点を両立する診療科です。
たとえば、交通事故によって顔に大きな傷が残った場合、単に傷をふさぐだけでなく、「いかに目立たなく自然な形に治すか」を追求します。また、先天性の異常である口唇裂(みつくち)や耳の奇形などに対しても、成長や発達を考慮しながら、長期的な視点で手術や矯正を行います。手術跡や火傷、ケロイドといった傷跡の修正、皮膚腫瘍の切除後の整形、眼瞼下垂(まぶたが垂れて見えにくくなる状態)の改善なども形成外科の担当範囲です。
さらに、がんの手術後に損なわれた体の部位(たとえば乳房や顔面)を再建する役割もあります。こうした再建外科の分野では、皮膚や筋肉、骨などを他の部位から移植して形を整える高度な技術が求められます。手術による外見の変化が心に与える影響を軽減し、患者の生活の質(QOL)を守ることも、形成外科の大切な使命です。
また、形成外科は目に見える部分だけでなく、皮膚の下の構造、神経、血管の動きなどにも配慮しながら治療を行います。たとえば指の切断や神経損傷のような複雑な外傷でも、機能と形の両方を回復させるために緻密な再建手術が行われます。こうした総合的な対応力は、他の外科領域とは異なる形成外科ならではの特徴です。
このように形成外科の役割は、単なる“外見の修正”ではなく、身体の正常な機能を回復しながら、患者の自然な外観や自信を取り戻すための医療です。見た目に関わるコンプレックスの解消、傷跡の改善、再建治療まで、患者一人ひとりの悩みや希望に寄り添った対応が求められる、極めて専門的で人間的な診療科といえるでしょう。