井戸水の水質検査と浄水処理

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井戸水は「水道法水質基準51項目」に加え2025年1月に環境省専門部会が提示したPFOS・PFOA合算50ng/L以下の暫定目標値が実質的な新基準となり、ミネラルウォーター規格も同値へ改正が進むため自家井戸でも同水準の管理が推奨される。検査は最低年2回、渇水期には鉄・マンガン・硬度・硝酸性窒素、出水期には大腸菌・濁度・農薬を重点に行い、結果が上限の80%を超えた時点で要注意フラグを台帳に記録しトレンド管理する。PFASや1,4-ジオキサンなど揮発性低分子は粒状活性炭と逆浸透膜(RO)の二段処理で95%以上除去が実証されており、鉄・マンガンはエアレーション→急速ろ過、硝酸態窒素は陰イオン交換樹脂で再生塩コストと交換サイクルを試算してから導入するとライフサイクル費用を抑えられる。豪雨後の表層水混入による大腸菌陽性や、浜松市で報告された硝酸性窒素11mg/L超過事例など、近年の事故は「周辺土地利用の変化+井戸構造劣化+塩素注入停止」が複合要因だったと国の調査で解析されている。安全運用の勘所は①六か月ごとの動水位測定で揚水効率低下を早期発見しスクリーン目詰まりや浅層漏水を修繕②ケーシング継手と井戸蓋のシールを毎年目視しヘアライン亀裂があればエポキシで補修③浄水装置の差圧・透過率・残留塩素をデータロガーで24時間監視し逸脱時には即座にバイパス遮断④検査成績書・作業記録・センサー履歴をクラウド保管しAI異常検知に連携の四段階。処理後は遊離残留塩素0.1mg/L以上・総トリハロメタン80µg/L以下を維持し、PFHxSなど次世代PFASは環境省が2024年から段階規制を開始しているため、活性炭更新間隔を従来の2年から1年へ短縮するなど先取り対応が望ましい。異臭・着色など五感変化を検知したら直ちに飲用を停止し、緊急検査が陰性になるまでRO水または市販水で代替する運用ルールを家族全員と共有しておけば、地下水という地域資源を安全に享受しつつトラブルによる医療費や設備交換費を最小化できる。