消防保守点検の際に注意すべきこと

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消防保守点検を実施する際には、法令遵守や設備の安全確保に加え、作業の正確性や施設利用者への配慮など、さまざまな点に注意する必要があります。点検は単なる“義務”ではなく、万一の火災や非常時に人命と財産を守るための極めて重要な作業であるため、軽視せず、丁寧に進めることが大切です。以下に、消防保守点検を行う際に特に注意すべき点をまとめます。

まず最も重要なのが、有資格者による点検を行うことです。消防法では、消防設備の点検を「消防設備士」または「消防設備点検資格者」が実施することを定めています。無資格者が勝手に点検を行って報告した場合は、法令違反となり罰則の対象になる可能性があります。点検業者を選ぶ際には、資格の有無や実績、報告業務まで適切に対応できる体制かを確認することが必要です。

次に注意したいのは、点検対象設備の把握と点検範囲の確認です。建物によって設置されている設備は異なり、自動火災報知設備、消火器、避難はしご、スプリンクラー、誘導灯など多岐にわたります。すべての設備が点検対象であり、見落としがないように建物の図面や過去の点検記録をもとに準備を行うことが重要です。特に増改築や設備の増設があった場合は、最新の構成に合わせて点検項目を見直す必要があります。

また、点検中の安全対策と利用者への配慮も欠かせません。作業中に非常ベルが鳴ったり、電気系統の一部を操作することがあるため、テナントや住人、施設利用者にあらかじめ周知しておくことがトラブル防止につながります。学校や病院、商業施設などでは点検日時を調整し、混雑や業務に支障が出ない時間帯を選ぶなどの配慮も求められます。

点検記録の保存と消防署への報告も忘れてはならないポイントです。点検結果は「消防用設備等点検結果報告書」として、所轄の消防署に年1回または3年に1回(対象物の種別による)報告する義務があります。提出期限を過ぎていたり、虚偽の内容が記載されていると、指導・改善命令の対象になります。また、報告書は保管義務もあるため、消防からの立ち入り検査に備えて正確に管理しておきましょう。

最後に、発見された不具合への迅速な対応が重要です。点検中に機器の故障や作動不良が見つかることは少なくありませんが、指摘を受けたまま放置してしまうと、万一の火災時に設備が機能せず、人命に関わる重大な事故につながる恐れがあります。不具合が見つかった場合は、早急に修理や交換などの対応を行い、再発防止策も検討することが望まれます。

消防保守点検は、単なる書類上の義務ではなく、命を守る備えそのものです。適切な知識と意識を持って、確実な点検と報告、そして問題があれば速やかな改善を行うことが、安心・安全な施設管理の基本となります。